長谷村工房

オートバイ等の作業備忘録、兼日記。

XR250で貧乏パニア 強度計算編 1/2

今回はパニアフレームデスクの強度計算についてお話します。
この強度計算はパニアフレームデスクのみならず、様々な状況で利用できます。皆様の参考になれば感謝の極みです。
一応、私は高校・大学と工業系で機械工学専攻でした。とは言え仕事で設計をしている訳でもなく、所詮は素人に毛が生えた程度の計算ですので、あくまでご参考までに。間違っていたらごめんね!

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さて、強度計算と言っても、今回お話しするのは曲げに関することだけです。
全部紹介したら、本気で本が一冊出来ますので。

 

まずは「何処にどの様に力が掛かっているか?」という事を求めなければなりません。
さて、読んでくださる方を小馬鹿にしたような問ですが、左端を支点として固定している棒の右側を、右に引っ張ったらどうなるでしょうか。

 

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当然、動きません。
次に、その棒が曲がっていたらどうでしょうか。
その棒はくるくる回る事になります。至極当然です。
しかし、問題はこの曲がった棒に「どの方向にどのくらいの力が掛かったか」という事です。

 

考え方としては、まずは支点と力点を線で結びます。これを直線Aとします。
次にその直線Aに対して、力点にかかっている力Fを「そのまま同じ方向の物Fy」「直角なものFx」に力を分解します。
所謂「直角分力」と言うものを求めるわけです。

 

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こうすると一目瞭然です。Fyは棒がくるくる回ることに関しては一切関与していません。
Fxの力でこの棒は回っていることになります。
現実問題としては、Fyも棒の曲がっている箇所を真っ直ぐ伸ばそうとする働きをしています。なので完全な無駄力ではないです。
が、計算の目的に応じてかかっている力の方向や大きさを求めるのはとても大事です。というかこれが出来ないと計算できません。
この直角分力の計算も三角関数が必要ですので、「数学など忘却の彼方」という方も記憶の海を漂ってみてください。


学校の勉強と言うのは、生き方次第で役に立つものです。

 

 

 

さて、次に曲げの計算に移ります。
様々な過程をすっとばして計算式を出しますと、

σ=M/Z

となります。


σは許容曲げ応力。梁が受ける事が出来る、最大の応力になります。
Mは曲げモーメント。曲がる箇所からの距離と、そこにかかる力で計算します。バイク乗り的には、トルクと言う方が分かりやすいでしょうか。
Zは断面係数。梁の断面形状の応じて計算式があり、その計算により求められます。

 

 

まずはσ(許容曲げ応力)から求めましょう。
金属は引っ張ると、伸びて切れます。当然ですね。
この切れるときの力を極限強さといいます。これを「金属を引っ張って強度試験をしたとき」の極限強さを、引っ張り強さと言います。


この数値で計算しますと、想定以上の力が掛かったときにはブッ壊れます。
想定以下の力でも材料に曲がりなどのゆがみが出てしまい、所定の機能を果たせなくなる恐れがあります。
極限強さの名の示す通り、異常が出たら即交換などの極限の軽量化を進めるとき以外で、この数値で計算するのはお勧めしません。

 

しかしバネの様に、金属の種類によってはある程度伸びても元に戻る特性があります。
この伸びても元に戻る力の限界を弾性限度と言います。
この数値を使えば、少なくとも想定の範囲内であれば荷重によるたわみが出ても、荷重を外せば元に戻ります。バネのように。

 

しかしこの数値は材料によっては求めることが難しいようです。


ステンレスもその一つのようで、そこでよく出てくる数値が「耐力」です。
耐力は、簡単に言うと材料がちょっと伸びちゃったときの力です。
そのちょっと伸びちゃった量は、一般的に0.2%となります。
つまり1mの材料をその耐力で引っ張ると、2mm伸びて、力から解放しても元に戻りません。
「戻んねえのかYo!」って話なんですが、弾性限度が調べても出てこないからね。仕方ないね。
今回はこの耐力で計算します。

 

 

ところで「曲げの計算なのになんで引っ張りの力で計算すんの?」という事ですが、例えば丸棒を曲げたとします。
その時に、曲がった部分の外側は引っ張られて伸びています。内側は圧縮されて縮んでいます。
曲げとは、引っ張りと圧縮の合わせ技な訳ですね。


ネットで検索すると、

JIS B8265によると
許容せん断応力=許容引張応力x0.8
許容曲げ応力=許容引張応力x1.5
と規定されている。

とのことでしたので、今回は引っ張り試験で求められた耐力を使用することにします。

 

 

さて、調べてみた感じではステンレスの耐力は低くても150[MPa]はあるようです。
平均すると200[MPa]前後が多い感じでしょうか。
使用される材料が分かればいいのですが、「ステンレス」としかわかりませんので、まぁ200[MPa]で良いでしょうか(めんどくなってきた)。
150[MPa]に上記の1.5を掛けても225[MPa]になりますし。

 

これにさらに「安全率」を掛けます。
安全率とは、「こういう荷重なら、こんくらい多めに見積もっておけば大丈夫だよ。」という数値です。
設計者の経験により変わるものでもあるのですが、目安として言われているものがあります。


鋼材の場合は

静荷重 3
繰返し片振り荷重 5
繰返し両振り荷重 8
衝撃荷重 12

となっています。


大雑把に言うと、静荷重はそっと荷重をかけて、そのまま放置。
繰返し片振り荷重は、荷重を掛けたり外したり繰り返すこと。
繰返し両振り荷重は、荷重を掛けたり外したり繰り返すうえに、荷重を色んな方向から掛けることです。
衝撃荷重は、読んで字の如し。荷重をドスッと一気にかけることです。

 

まぁ衝撃荷重は特にですが、あくまで目安です。
同じオートバイで走っていても、50km/hで転ぶのと300㎞/hで転ぶのでは大違いです。後者は転ぶというより吹っ飛んでます。
しかし意味合い的にはどちらも衝撃荷重です。


今回は解りやすく、安全率は10とします。


「耐力」を「安全率」で割った数値が、今回の「許容曲げ応力」になります。つまり

200/10=20[MPa]

となります。

 

 

またもや長くなってしまったので、前編はこの位で。
次に続きます。

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